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今年の夏はバム鉄道

更新日:7月30日

[2024.07.30]


バム鉄道はどこ

シベリア鉄道にタイシェトという駅がある。バイカル湖近くのイルクーツクとシベリア最大の都市ノボシビルスクとの間だ。この駅からサハリンの対岸に位置するソビエツカヤ・ガバニまでを結ぶ鉄道がある。バム鉄道と呼ばれている(バイカル・アムール鉄道 Байкало-Амурская магистраль)。

バム鉄道

バム鉄道の苛酷な歴史

そのバム鉄道が1974年に建設が本格的に再開されてから、今年2024年で50年になるという。1938年に着工され1984年までの間に原生林や原野や沼地が切り開かれ、レールが敷設された。もちろん冬季は極寒だ。


このような苛酷な環境のもとで、労働者、受刑者、学生など様々な人々が建設あるいは強制労働にかかわった。その中には第二次世界大戦での日本兵捕虜たちも大勢いた。枕木1本に死者1人と伝えられている。徴兵されて凍土に果てていった兵士たちの無念さに対して私たちのできることは、まずこのような事実を知ることからだろう。



とりあえず今年の夏はバム鉄道

だが、そんなシリアスで重い歴史をよそに、この猛暑の続くなか私は酒を飲みながらバム鉄道の動画を見て毎日を過ごしている。動画とマップでこの鉄路をたどることがこの夏の趣味となった。高校生の時に地図を見ながら「静かなドン」(とっくに決着はついているが、今なおドン川付近では戦争中だ)を読んだように。


さて、私のロシアでの鉄道の乗車体験はと言えば。サンクト・ペテルブルクーモスクワ間とペテルブルクーペトロザヴォーツク間しかなく、残念ながらシベリア鉄道にも乗ったことはない。


けれども西シベリアの街からカムチャツカまでを少しばかり旅をしたせいか、これらの動画の車窓からの風景、あるいは街歩きの風景はなんとなく見覚えのある世界になる。



シベリアの地方都市

先住民の言葉からかロシア語とは思えないような新鮮な響きの駅名、シンプルで瀟洒(しょうしゃ)な駅舎、型通りとも言える建築群と広場、通りに並ぶ店、通り過ぎる人々のいぶかしげな表情。街区を通り抜けるとトタン塀に囲まれた古い住宅が点在する地区となる。


どれもこれも似かよってはいるが、私たちの世界とは異なる幻想的な風景だ。


そういえば「銀河鉄道の夜」はサハリン鉄道での旅が一つのイメージでもあったらしいが、もし宮沢賢治がバム鉄道に乗っていたならば、また少し異なった作品になったかもしれないなどと思ってしまう。



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